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物語 - その他関係 44 - 移 民 の 子 - 1926 - 外村 明 |
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移 民 の 子 1926 外村 明 何故にこんなに涙もろい僕なんだろう 今夜も叔父の手紙を読んでいると 瞼の裏が熱くなって来るのです 故郷の幼い弟が お父さん お父さん と言って 伯父にすがると言うのです ほんとうに無邪気な弟よ あまりにも不憫な弟よ 父も兄も渡米した後に生まれたお前は 本当の父がありながら お父さんと呼びかけ 兄ちゃんと言ってなつくことも出来ないのだ たった一人の母と倶に おお、どんなに寂しく暮していることか 家の貧しいそれ故だ 哀れな移民の子の悲しさだ ああ、ぼくは四歳の時に父と別れ 次の弟は父の渡米した翌年生まれ そして二人は十七年余り 父を知らずに育ったのだ 余りに悲しい哀しかった俺達の過去よ そして、また、そんなに寂しい同じ事を 一番末の弟にまで 繰り返さなければならぬのかと思うと 僕はたまらなくなって来るのです 窓の外では 冷たい晩秋の夜霧が 僕の代わりに吐息しています 1926年11月4日 ロサンゼルスの羅府新報に掲載 www.isseipioneermuseum.com |
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注 |
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一世パイオニア資料館 - isseipioneermuseum.com - 2013 |