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米国西北部同胞五十年
　　　　　　　　　　　　　岡本季正　　　シヤトル駐在帝国領事館領事
　　　　　　　　　　　　　　　　　 昭和三年十二月　（１９２８)

吾同胞が初めて合衆国西北部に移住するに至りてより星霜を閲すること既に五十年、今日在留同胞の数は約二万人に上がって居る。五十年の歳月は敢えて長しと云うを得ざるべきも、是れ悉く在留同胞努力の歴史たらざるは無い。

これ等同胞は我日本民族海外発展の先駆者として遠大なる理想とＸＸたる雄志を抱き万里の波濤を越えて遠く北米の一角に新天地を求め、刻苦精励以ってかつては米人の全く顧みざりし棘棘の地も之を開拓して豊沃の美田と化し、其の他鉄道の建設に、森林の伐採に、商業に農業に各方面に渉って活動貢献し、しかも其の白人の間に伍して事を行うや、異人種たるの故を以って白眼視せられ差別待遇せられ排斥迫害を受け、更にまた排日移民法・排日土地法により大打撃を受くるなど千辛万苦と戦い悪戦苦闘を続けて今日に及んでいるのである。

西北部在留同胞現今の発展を直視する時、其の今日あるを得せしめたるこれ等同胞先駆者の尊き献身的犠牲的努力に対しては何人と雖も満空の尊敬と感謝とを禁じ得ないであろう。此等同胞の為し来たれる事跡は宜しく之を歴史に録して永く後昆に伝へ、以って其の偉大なる功労を広く世間に周知せしめ、また同胞子弟将来活動発展の指針と為すべきである。

Preface from the book, "Beikoku Seihokubu Nipponjin Iminshi".

「米国西北部日本人移民史」の序文　1928年

一世パイオニア資料館