Japanese American Issei Pioneer Museum
日系一世の奮闘を讃えて

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物語 - その他関係
18 - 日系人の足跡 一世パイオニア資料館  - 佐々木志峰
         
 

日系人の足跡 一世パイオニア資料館

 

北米報知新聞    2008 年1 月9 日    佐々木志峰

シアトルの北西、ピュージェット湾を越えた小さな町ハンスビルに構える一世パイオニア資料館。初めて足を運んだ館内は、日系移民の足跡を残す貴重な資料で埋め尽くされていた。シアトル郊外のエドモンズからフェリーに乗りキングストンへ、そこから車で約15 分ほど、一軒家の離れにある建物の入り口に掲げてある「一世パイオニア資料館」の看板。館内の様子は、外観からは想像がつかない。

館長は竹村義明元シアトル別院輪番(73)、父親は一世で白河仏教会の開教師、母親は2世、1956 年に米国に入国後、日系1一世、2世と多くの交流を経て76 年、「仏教会として何か社会に貢献したい」気持ちから、カリフルニア州のサリナス仏教会に一世パイオニア資料館を設置した。米国西海岸の仏教会を移りながら、カ州、オレゴン州、ワシントン州などで資料を収集。開教師としての役目を終え退職した数年前に、現在の場所に館を移したという。「日系人が貢献していることは一杯ある。その貢献を少しでも残す事ができれば」と話す竹村館長。「1世に対する気持ち。それに合ったものを集めています」

中に足を入れると、資料の数に圧倒される。移民者たちが船旅に持ち込んだ大きなトランク。日系社会について書かれた新聞のアーカイブ、写真。強制収容所に日本から送られた出版物。自身が関係した仏教関係の資料。特に金儲けの方法に関するものや、日本帰国者に向けたアドバイス書など、出稼ぎ目的で渡米した1世移民たちが読んだ書物からは、当時の生活ぶりを読み取ることができる。また帰米2 世が日本の親戚と交した手紙や当地日本語学校に通っていた2 世の日記も置かれている。達筆な文章で書かれた日記を手に竹村館長は、「こちらの日本語教育レベルは相当高かったのではないでしょうか」と話す。

日本語で残された資料が数少なくなるなか、同資料館は学者、研究員にとって貴重な場所といえる。昨年は日本から関係者5 名が数日間にわたり、資料調査にあたったという。しかし本来の目的は、研究者たちの資料としてだけでなく、一般の訪問者に日系移民者たちの気持ちを感じてもらうことだという。

「実際に見て、物をじかに触ってほしい。若い日系人たちも、自分たちにそういう親、家族がいたということを分かってほしい。現在は過去の集積なのですから、彼らの苦労を忘れてはいけない」。移民の国、米国の地に確かに残されている日系移民の足跡。彼らの気持ちを思い、毎日の供養も欠かさない。「この海の水は太平洋に、そして日本に繋がっているのですから」と――。資料館から見えるフッドカナル湾に目を向け、竹村館長は静かに話した。

記事=佐々木志峰、北米報知新聞編集長【ワシントン州シアトル】

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