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物語 - 一世関係 33 - 戦後におけるシカゴ日系人の発展状態に就いて- 疋田庄太郎 |
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戦後におけるシカゴ日系人の発展状態に就いて 疋田庄太郎 西部沿岸に永年在住した我等同胞は、日米戦争の勃発と共に第一班のモンタナ及び北ダコタ州の抑留所への日系指導者拘留に続いて、約半年足らずして一般日系人全部が軍部立ち退き命令に依り、米国中部十ヶ所に設けられた収容所に強制的に移されたのであった。約三ヵ年に亘る不自然なキャンプ生活も、米国政府の転住方針に基づき1944 年12 月に「漸次にキャンプ閉鎖」の発表となったのであるが「将来、我等の生活根拠を何処に置くべきか」と云う重大問題が我等の頭上に投げかけられたのであった。 転住のプログラムは1942 年7 月20 日WRA( 戦時転住局) がアメリカで教育を受けた二世(帰米二世は除外)の中西部での民間職就職を認めたのが始まりで、それ以来多くの若人がニューヨーク、シカゴ、デンバーなどの内陸部に転住して、転住所から出所した。しかし、1945 年1 月20 日までは西部沿岸への立ち入りは許されていなかったので、それまでに出所した人は東部、中西部或いは山中部に新生活の活路を求めたのである。1944 年12 月18 日に、十ヶ所のキャンプは1945 年末に全部閉鎖することが発表されたので、キャンプにいた全ての日系人は出所することになるが、「何処へ行くか」の問題を抱えて、当時同胞の精神的苦労は一通りでなかった。永年住み慣れた西部沿岸も開放されたが、排日の空気がまだ強いとの情報もあり、古巣への帰還を躊躇した人も多かった。 新参者をシカゴは温かく迎えてくれたが、困難な事態も数多だった。だが、みんな良く頑張った。克く善処し、克く努力し、新地の米人社会に入り込んでいったのである。十数年後の今日、その苦労は報いられ、各地共「日系人は模範的な市民である」と一般米人から認めらるるに至ったのである。斯うした同胞の大挙転住は、日系人史に残るべき画期的出来事であり、将来二世三世の米国における発展への第一歩であった事は明らかであり、吾人の最も慶ぶべき処である。 中西部への転住
前記の如く転住当時のシカゴ日系人口は約二万に近いと見られているが、その後西部沿岸の復調に伴って同地へ帰還した人もあるので、現在は約一万五六千人と見られている。これ等の日系人は戦前の如く一区域に集中するのでなく広い市内に散在しているので、日系人街の如き感は全くない。 実業界への発展 職業方向への進出 初給は一時間一弗四五十仙、一世の婦人は裁縫師、或いは手先で出来る工場働き、例えば時計、テレビジョン、レデオ、ランプの如き製造会社で、初給一弗二三十仙である。二世方面になると、各種技師、経理、簿記、メキャニック等多く、特に工場のフォーマン級が多いようである。これらは何れも、年俸六七千から一万弗に近い者がいる。二世婦人の職業としては、秘書或いはタイピストが多く、孤の方面に於ける日系婦人の評価は高い、言い替へれば各社共引っぱりだこである。当シカゴには戦後多数の日系人を雇用する会社或いはホテルがあるが、その内マクラーグ会社の二百五十名、カーティスキャンデー製造会社の百名、ゼネラルメーリングの七八十名、ヒルトンホテルの六十名等であり、十五名から二十名を雇っている会社は、恐らく数十を越えるであろう。 マクラーグ会社と日系人の関係 会社の幹部側に於いても特に日系人に好意を持ち、戦後の日本人留学生にも就職便宜を図ってくれた関係上、現在〈1960 〉日本に於いて活躍しつつある人で、当会社に勤めながら通学した人の数は五十名を越えるであろう。同会社の二十名以上のフォーマン中その半数は日系人である事も特記したい。偶然と言うか、奇跡と言うか、同社販売支配人のイエーラル・ペリー氏は、ペリー提督の末裔であり、先年(井伊直弼末裔の)井伊直愛彦根市長が日米交流の使命を帯びて当地に立寄られた際に、両氏を紹介するの機会を得た事は筆者にとり光栄の至りであった。 日系人団体 更に筆者の最も慶ぶ事は、戦後各地に於いて少年犯罪問題の突発するにもかかわらず、 当シカゴ市に於いては未だかかる問題の無かりし事で、各宗教団体、其の他社会奉仕団体の幹部諸氏は勿論、一般父兄の指導よろしきと見て、これ等諸兄に対し心から敬意を表し且つ感謝する次第である。昔からシカゴは、アル・カポンやギャングの根拠地であるから如何にも恐ろしい都市の如く考えている人も多くあるようであるが、現在では決して斯かる懸念の必要なく米国内でも最も友好的な都市である事を特記したい。 シカゴの日系人 1960年 日米修好百周年を記念して県人会誌に発表
一世パイオニア資料館
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